MINIXの30年の歴史から学んだこと (原題: Lessons learned from 30 years of Minix)感想
島慶一さんが翻訳したAndrew S.Tanenbaum教授の「MINIXの30年の歴史から学んだこと (原題: Lessons learned from 30 years of Minix)」を読んだ。これにはMINIXの開発の歴史やTanenbaum教授の思入れが語られていてたいへん感銘を受けた。ざっくりとまとめてしまうと
- MINIXは自分の情熱を注ぎ込んだ大事な作品
- やっぱりmicrokernelは優れている(comp.os.minixで炎上したのは不注意だった)
- 広くは知られていないだけで研究としてMINIXは成功した
といったところでしょうか。若干「自分は正しかった」と強弁しているのではないかと感じる箇所もあるけれども回顧録なのでまぁそんなものでしょう…。Linus氏とのcomp.os.minixでの論争についてはLinus氏側の視点で語られているものが多いのだけれども, Tanenbaum氏側の視点が語られているのが興味深いところです。
Bathtub Curveについて
Bathtub Curveについての一番わかりやすい説明をしていたのはこの資料だった。3頁目と4頁目でいままでばらばらだった知識が繋がった気がする。
http://www.ieee802.org/3/hssg/public/jan07/winzer_01_0107.pdf
FITについて
最近, 故障率の単位FIT(Failure In Time)が通信機器の信頼度の計算方法を規定した規格Telcordia SR-332で規定されていることを知って胸のつかえが取れた。FITは稼働時間あたりの平均故障回数を示しているのだが, いままでというmagic numberが含まれていることに疑問を感じていたのだ。しかしこれは単にTelcordia SR-332で規定している信頼度の計算方法ではFITを故障率としているということに過ぎないということを理解した。 調べている途中でTelcordia SR-332の計算方法のお手本(?)となったMIL-HDBK-217では故障率として稼働時間あたりの平均故障回数を使っていることを知り, この結論に至った。故障回数が整数であることにこだわらなければこれらは1時間あたりの故障件数を算出できるのだから何の問題もない。
Jargon File
たけおかさんのLispマシン・シミュレータの紹介という発表資料を読んでいたらJargon Fileの書籍版The New Hacker's Dictionaryが紹介されていた。念のため一言添えておくとJargon Fileがまとめられた当時はHackerという言葉に悪い意味は含まれていなかった。そしてJargon Fileは最近どうなっているのだろうかと思って調べてみた。ESRが保守していたようだがどうも更新はVersion 4.4.7(2003年12月29日) で止まっている模様…。すでに歴史的価値しかない。
ちょっと見てみようかなとも思ったのだが何しろ一塊りのTextなので若干扱いにくい。今時ならば電子書籍の形式で欲しいなと思って探してみたが最新版が見つからなかった。しかしVersion 4.2.2であればProject GutenbergでePub形式のものを配布しているのを発見。とりあえずこれをGoogle Play! Booksに放り込んで持ち歩くことにした。ちなみに同じ版のKindle版もあるがこちらはなんと有料で1170円…。ちなみに紙書籍版は2,347円(いずれも2018年5月2日現在)。
The Jargon File, Version 4.2.2, 20 Aug 2000
- 出版社/メーカー: HardPress
- 発売日: 2015/10/28
- メディア: Kindle版
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- 作者: Eric S. Raymond
- 出版社/メーカー: Createspace Independent Pub
- 発売日: 2017/08/20
- メディア: ペーパーバック
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全ての版を見たければJargon File Text Archive, A Large Jargon File Collectionに行けばText Archive Indexから手繰れるのを発見したのでここで満足。昔日本語訳が出版されていた時に買って読んでおけば今更こんなことを探すことはなかったはずではあるがそれなりに楽しい時間になった。
ブログに回帰
しばらく離れていたブログをまた始めてみる。